日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス GUIDANCE FOR IMPLEMENTING AN ANTIMICROBIAL STEWARDSHIP PROGRAM IN JAPAN

(2017年9月26日 更新)
(2017年8月17日 掲載)

公益社団法人日本化学療法学会・一般社団法人日本感染症学会・
一般社団法人日本環境感染学会・一般社団法人日本臨床微生物学会・
公益社団法人日本薬学会・一般社団法人日本医療薬学会・
一般社団法人日本TDM学会・一般社団法人日本医真菌学会
8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会 委員長 二木芳人

 2016年春、政府は薬剤耐性(antimicrobial resistance、AMR)対策アクションプランを公表し、国として世界的な脅威となっている耐性菌感染症に積極的に取り組む姿勢を明確にした。5月の伊勢・志摩サミットでもこの点は強調され、9月の世界保健相会議でも改めて各国の協調が確認されている。そのなかの一項目に‘抗菌薬の適正使用’が謳われており、耐性菌対策の重要な柱の一つとしての取り組みが望まれている。抗菌薬の適正使用を考えてみると、言うまでもなく過去の抗菌薬の頻用・乱用は耐性化を助長した元凶である。しかし、それゆえに院内感染対策の重要項目の一つにも加えられ、特定抗菌薬の届出制や許可制などの使用規制が実施されてきた経緯もある。それがまったく無効というわけではないが、形骸化した届出制や、感染症治療の専門家による積極的な介入を伴わない許可制などが、目を瞠るような耐性菌抑制効果を生むとは考えられないし、事実欧米ではバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の感染拡大を防止・抑制することはできなかった。そこで、注目されているのが抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship、AS)と呼ばれる取り組みであり、政府のアクションプランでもASの実践が推奨されている。ASは1990年代から欧米では積極的に取り組まれてきたもので、その解説や実践ガイドラインも公表されており、2016年には新しいガイドラインも米国感染症学会から示されている。すなわちASへの取り組みは欧米では長い歴史があり、さまざまな取り組みや方法論も試みられ、またその評価もなされているので、これからASに取り組もうとするわれわれには大変参考になる。他方、欧米とわが国とのASを実践するうえでの背景因子の差は大変大きく、医療制度や感染症の実態は異なり、さらにはASに取り組むべき各領域での感染症専門家の質と数には隔たりが大きい。しかしながら、そのような状況下でもASに取り組むことはわれわれにとっても急務であり、先送りにすることはできないと考えられる。そこで、今回、わが国においてASの実践に取り組む際に中核となるであろう8学会は共同して、2016年春にASの必要性を国や社会に訴える提言を公表し、その後、わが国におけるASの実践がどのような形で取り組まれるべきかをガイダンスとして公表すべく作業を行ってきた。適正使用は院内・外来いずれの抗菌薬処方においても重要であるが、今回は院内抗菌薬処方に限定したガイダンスの作成を目指した。完成したガイダンスは8学会でコンセンサスが得られたのでここに公表する。それぞれの医療施設でこれから新たにASに取り組もうとされる場合に、本ガイダンスを参考にしていただければ幸いである。

8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会

委員長

二木芳人(昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門)

副委員長

賀来満夫(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学部門)

委員

(日本化学療法学会)
 青木洋介(佐賀大学医学部附属病院感染制御部)
 川口辰哉(熊本大学医学部附属病院感染免疫診療部)
 小阪直史(京都府立医科大学附属病院薬剤部)
 関 雅文(東北医科薬科大学病院感染症内科・感染制御部)
 田邊嘉也(新潟県立新発田病院内科)
 藤田直久(京都府立医科大学感染制御・検査医学教室)
 前田真之(昭和大学薬学部臨床薬学講座感染制御薬学部門)
 村木優一(京都薬科大学医療薬科学系臨床薬剤疫学分野)
 森田邦彦(同志社女子大学薬学部臨床薬剤学)
 栁原克紀(長崎大学病院検査部)
 山田武宏(北海道大学病院薬剤部)
 吉田耕一郎(近畿大学医学部付属病院安全管理部)

(日本感染症学会)
 松本哲哉(東京医科大学微生物学分野、東京医科大学茨城医療センター感染制御部)

(日本環境感染学会)
 飯沼由嗣(金沢医科大学臨床感染症学講座)
 菅野みゆき(東京慈恵会医科大学附属柏病院感染対策室)
 村木優一(京都薬科大学医療薬科学系臨床薬剤疫学分野)

(日本臨床微生物学会)
 高橋俊司(市立札幌病院検査部)
 栁原克紀(長崎大学病院検査部)
 山本 剛(神戸市立西神戸医療センター臨床検査技術部)

(日本薬学会)
 森田邦彦(同志社女子大学薬学部臨床薬剤学)

(日本医療薬学会)
 奥田真弘(三重大学医学部附属病院薬剤部)

(日本TDM学会)
 谷川原祐介(慶應義塾大学医学部臨床薬剤学)

(日本医真菌学会)
 竹末芳生(兵庫医科大学感染制御学)

抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス(PDF 1.43MB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 65, 2017年5号(9月) p.650~687

最終更新日:2017年9月26日
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