(2025年3月12日 掲載)
公益社団法人日本化学療法学会・一般社団法人日本感染症学会・
一般社団法人日本環境感染学会・一般社団法人日本臨床微生物学会・
公益社団法人日本薬学会・一般社団法人日本医療薬学会・
一般社団法人日本TDM学会・一般社団法人日本医真菌学会
8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会
前文
2017年に発行された「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」は、COVID-19パンデミックを挟んで7年ぶりに初めての改訂の運びとなったが、この間に、わが国の抗微生物薬適正使用支援(antimicrobial stewardship:AS)を取り巻く環境が大きく変わった。まず2016年に国家プロジェクトである抗微生物薬耐性(antimicrobial resistance:AMR)対策に関するアクションプランがスタートし、これに呼応する形で2018年度には待望の「抗菌薬適正使用支援加算」が新設され、AS活動は一気に全国の医療機関に広がった。しかし、抗微生物薬適正使用支援チーム(antimicrobial stewardship team:AST)活動を担う肝心の薬剤師や医師のフルタイム当量(full-time equivalent:FTE)は諸外国と比べ低いままであることが学会のアンケート調査で明らかとなり、加算基準を満たすのは比較的大規模な医療機関のみであるといった課題も浮き彫りとなった。2022年度の診療報酬改定では、新興感染症などに対応できる医療提供体制の構築に向けた取り組みとして、それまでの感染防止対策加算と抗菌薬適正使用支援加算が「感染対策向上加算1~3」にまとめられ、さらに「外来感染対策向上加算」が新設されたことで、大規模施設だけではなく中小規模施設やクリニックでもインセンティブが得られるようになった。これら向上加算の施設基準には、当然ながらASへの取り組みも含まれており、今後ますますASの裾野が広がることが期待される。
このような背景から今回の改訂では、初版で手付かずであった“中小規模施設におけるAS”と“外来におけるAS”に関するガイダンスを加筆し、各論の「AS実践プログラム」に追加した。また、抗真菌薬も対象としていることからタイトルを「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」から「抗微生物薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」に改め、さらに7年間のアップデートを各項目で反映させ、特にAS推進のための組織体制構築、介入方法、新たなAS評価指標などは大幅に加筆・修正された。
初版は、単に海外のガイドラインを転用するのではなく、わが国特有の医療事情や感染症の実態に即した形で指針を作成する必要があったことから、広く関連する8学会(日本化学療法学会、日本感染症学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会、日本薬学会、日本医療薬学会、日本TDM学会、日本医真菌学会)が協力して合同で完成させた。今回も、わが国における抗微生物薬適正使用支援プログラム(antimicrobial stewardship program:ASP)のさらなる普及・定着が必要なことから、同じ枠組みで改訂を進めた。本ガイダンスが、医療機関の規模を問わず幅広く活用いただければ幸いである。
8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会委員長 川口辰哉
8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会
委員長
川口辰哉(熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科)
副委員長
賀来満夫(聖マリアンナ医科大学医学部感染症学講座)
委員
(日本化学療法学会)
青木洋介(佐賀大学医学部附属病院感染制御部)
小阪直史(京都府立医科大学附属病院薬剤部)
関 雅文(埼玉医科大学医学部国際医療センター感染症科・感染制御科)
田邊嘉也(新潟県立新発田病院呼吸器内科)
藤田直久(京都府保健環境研究所)
前田真之(昭和大学薬学部臨床薬学講座感染制御薬学部門)
村木優一(京都薬科大学医療薬科学系臨床薬剤疫学分野)
森田邦彦(同志社女子大学薬学部臨床薬剤学)
栁原克紀(長崎大学病院検査部)
山田武宏(北海道科学大学薬学部薬物治療学分野)
吉田耕一郎(近畿大学病院安全管理センター感染対策部)
アドバイザー:二木芳人(昭和大学医学部)
(日本感染症学会)
栁原克紀(長崎大学病院検査部)
関 雅文(埼玉医科大学医学部国際医療センター感染症科・感染制御科)
(日本環境感染学会)
菅野みゆき(東京慈恵会医科大学附属柏病院感染対策室)
菅原えりさ(東京医療保健大学大学院医療保健学研究科感染制御学)
(日本臨床微生物学会)
清祐麻紀子(九州大学病院検査部)
高橋俊司(市立札幌病院医療品質総合管理部感染管理担当課)
山本 剛(大阪大学大学院医学系研究科変革的感染制御システム開発学寄附講座)
(日本薬学会)
森田邦彦(同志社女子大学薬学部臨床薬剤学)
(日本医療薬学会)
松元一明(慶應義塾大学薬学部薬効解析学講座)
村木優一(京都薬科大学医療薬科学系臨床薬剤疫学分野)
(日本TDM学会)
池田賢二(大阪大学大学院薬学研究科)
(日本医真菌学会)
篠原孝幸(国立感染症研究所真菌部)
山岸由佳(高知大学医学部臨床感染症学講座)
抗微生物薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス 2024年度改訂版(PDF 1.05MB)
日本化学療法学会雑誌 Vol. 73, 2025年2号(3月) p.95~156