日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応中止通知後における抗菌薬皮内反応試験の実施状況とアナフィラキシー反応に関する実態調査

論文名

抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応中止通知後における抗菌薬皮内反応試験の実施状況とアナフィラキシー反応に関する実態調査

委員会

  • 抗菌薬皮内反応検討委員会
    岩田  敏・草地 信也・佐藤 淳子・比嘉  太・堀  誠治・丸尾 彰範・渡辺 晋一・渡辺 二朗

抗菌薬皮内反応検討委員会報告について

 日本化学療法学会では、2003年に抗菌薬皮内反応の有用性に関する報告を発表し、その後、2004年10月には厚生労働省より抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応中止の通知が出されました。また抗菌薬皮内反応中止に伴って「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」が作成され、公表されました。そこで抗菌薬皮内反応検討委員会では皮内反応中止通知後の抗菌薬皮内反応試験実施状況と、アナフィラキシー反応報告の実態に関する調査を行い、抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応中止の妥当性について検討することになり、2007年5月に調査を実施いたしました。その結果は第54回日本化学療法学会東日本支部総会において発表いたしましたが、その後医薬品医療機器総合機構が、1999年10月1日から2008年9月30日までに報告された注射用抗生物質製剤等によるショック等の副作用報告状況について、皮膚反応の推奨中止前後での変化に関する調査を行ったので、その内容についても合わせて検討し、委員会としての報告書として本学会誌に掲載させていただくことになりました。
 結論としては、抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応中止の通知が出されたあと、多くの施設で抗菌薬投与前の皮内反応試験を中止している現状が明らかとなり、抗菌薬の投与に伴うショックおよびアナフィラキシー様症状発現時の処置についても、「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」に従って適切な処置が実施されていることがわかりました。また、厚生労働省に企業から報告された注射用抗生物質製剤の投与に伴うショックおよびアナフィラキシー様症状の件数から推定される同発生頻度に関しても、抗菌薬皮内反応中止後も抗菌薬投与に伴うショックおよびアナフィラキシー様症状の発生頻度に問題となるような増加は認められておらず、適切な問診と投与時の観察が実施されていれば、抗菌薬皮内反応試験が実施されなくても、安全性の面で特に大きな問題はないものと考えられました。よって抗菌薬皮内反応検討委員会としては、抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応中止は妥当なものであり、今後も抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応が不要であることを確認するとともに、抗菌薬投与前の問診と投与時の観察、ショックおよびアナフィラキシー様症状が出現した際の対応の重要性について改めて強調したいと考えます。
 報告書の会誌掲載が大変に遅くなりましたが、これによりわが国において抗菌薬に対するアレルギースクリーニング目的の皮内反応が撤廃され、適切な抗菌薬投与が行われることを望むものであります。
 なお、上記アンケート調査結果ならびに医薬品医療機器総合機構の副作用調査結果に基づき製薬会社は2011年12月末を目処に皮内反応検査薬の完全供給中止を各医療機関にすでに伝達しておりますことも申し添えます。

平成23年11月

抗菌薬皮内反応検討委員会
岩田  敏、渡辺 晋一

最終更新日:2014年3月20日
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