日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

JAID/JSC感染症治療ガイドライン2018―男性尿道炎とその関連疾患―

(2018年5月22日 掲載)

一般社団法人 日本感染症学会・公益社団法人日本化学療法学会
JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会
性感染症ワーキンググループ

濵砂良一1)、安田 満2)、高橋 聡3)、上原慎也4)、河合泰宏5)、宮入 烈6)、荒川創一7)**、清田 浩8)*

所属

  1. 産業医科大学泌尿器科(現 国家公務員共済組合連合会 新小倉病院泌尿器科)
  2. 岐阜大学医学部附属病院泌尿器科(現 岐阜大学医学部附属病院 生体支援センター)
  3. 札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座
  4. 川崎医科大学総合医療センター泌尿器科
  5. 金沢医科大学病院感染症科
  6. 国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科
  7. 三田市民病院
  8. 東京慈恵医科大学葛飾医療センター泌尿器科

  * 委員長
  ** 副委員長

緒言

 性感染症(sexually transmitted infection、STI)は広義の性行為によって伝播される感染症である。男性では尿道炎が、女性では子宮頸管炎が多い。また、陰部周囲の皮膚に病変をきたす性器ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマ、ケジラミ症なども含まれる。さらに、近年、オーラルセックスなどの性行為の多様化により性器外の直腸、咽頭、結膜などからもSTIの原因微生物が検出され、時に症状を引き起こす。尿道炎、子宮頸管炎の原因微生物としては淋菌(Neisseria gonorrhoeae)とクラミジア(Chlamydia trachomatis)の頻度が高く、それぞれ淋菌性尿道炎・子宮頸管炎、クラミジア性尿道炎・子宮頸管炎という言葉が使用されてきた。近年、淋菌、クラミジア以外の微生物が原因となる尿道炎、子宮頸管炎の存在が明らかとなってきた。特に男性では、淋菌、クラミジアがいずれも検出されない非クラミジア性非淋菌性尿道炎という疾患名が用いられるようになり、その中でMycoplasma genitaliumの病原性が明らかとなってきた。男性の尿道炎は症状が強い症例が多く、初診時に治療を開始することが多い。また、淋菌では多くの抗菌薬に対し耐性を占める株の割合が増加している。従って、高い確率で治療が可能となるような治療薬を示すガイドラインが必要であると考える。
  日本感染症学会、日本化学療法学会では2012年にJAID/JSC感染症治療ガイド2011を発刊し、さらに2014年に改訂版を発刊した。この中でSTIに対する治療に関して、その要約を示してきた。しかし、ガイドのなかですべての推奨グレードや、文献のエビデンスレベルを示すことは困難である。本文ではSTIの中でも頻度が高く、初期治療が必要である男子尿道炎に限定して、解説を加えて診断、治療のガイドラインを示す。なお、STIの診断、治療に関しては日本性感染症学会からガイドラインが発刊されており、本ガイドラインはそれとできる限り整合性を図っている。ただし、STI原因微生物の薬剤感受性など、新たに明らかとなった項目に関しては、治療薬の選択など部分的に違いがあることを付記したい。

JAID/JSC感染症治療ガイドライン2018―男性尿道炎とその関連疾患―(PDF 450KB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 66, 2018年3号(5月) p.323~340

最終更新日:2018年5月22日
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