日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―

論文名

JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―

委員会

一般社団法人日本感染症学会、公益社団法人日本化学療法学会
JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会
呼吸器感染症WG

  • 委員長
    三笠桂一
  • 委員
    青木信樹、青木洋介、阿部修一、岩田 敏、尾内一信、笠原 敬、門田淳一、岸田直樹、
    小林 治、坂田 宏、関 雅文、塚田弘樹、徳江 豊、中村(内山)ふくみ、比嘉 太、
    前田光一、栁原克紀、吉田耕一郎

緒言

一般社団法人日本感染症学会と公益社団法人日本化学療法学会では、2001年に「抗菌薬使用の手引き」を、また、2005年に「抗菌薬使用のガイドライン」を公表した。その後、「JAID/JSC感染症治療ガイド2011」を刊行し、その改訂とともにガイドラインを新たに作成することとなった。
呼吸器感染症ではすでに本邦では日本呼吸器学会から市中肺炎、院内肺炎、気道感染症、医療・介護関連肺炎診療ガイドラインが発表され、また、日本小児呼吸器疾患学会と日本小児感染症学会からは小児呼吸器感染症診療ガイドラインが出され、さらに、海外ではアメリカ胸部学会とアメリカ感染症学会のガイドラインをはじめ各国から多くの優れたガイドラインが相次いで発表された。その後、呼吸器感染症に関する臨床研究が進歩し、疫学や臨床診断、治療において多くの成果が蓄積された。しかし、呼吸器感染症は、原因微生物が耐性菌の増加とあいまってその種類が多肢にわたり、さらには最近のコンプロマイズドホストの重症化により原因微生物とともに病態が多様化し、また、治療の場が外来からICUと様々で、治療する医師も開業医や勤務医あるいは呼吸器科医や救急医、感染症専門医や抗菌化学療法認定医など多彩であり、使用できる抗菌薬は新規薬剤も加えその選択肢が膨大であり、治療方針が混然としているなどの実態がある。一方、最近では、PK-PDの概念が広がり、科学的に抗菌薬を使用することが重要視され、さらに、日本化学療法学会では、抗菌化学療法認定医制度を設け抗菌薬適正使用の普及につとめ、抗菌薬適正使用が普及しつつある。それらを包括して両学会では感染症治療ガイドラインー呼吸器感染症―を作成し、一定の治療指針を提示出来れば、呼吸器感染症の治療効果の向上や医療費の軽減、さらには耐性菌の防止に寄与すると考えた。
本ガイドラインでは、わが国の呼吸器感染症診療を反映しつつ、呼吸器感染症全般を広く網羅し、成人と小児を一括し、できるだけEBMに基づき作成することを目標とした。本ガイドラインの作成にあたっては、2012年に委員会が発足して以来、十分に検討を重ね統一的な見解を得、両学会の理事会を経て、ホームページで公開し、広く両学会員からの意見を集約し作成した。本邦にはこのように呼吸器感染症を広く網羅したガイドラインはいまだ存在しない。今後さらなる研究の発展によって本ガイドラインの内容も改訂を要する時期が到来するが、現時点で最も進歩した治療指針を提供できたものと考える。
本ガイドラインは全ての実地臨床医を対象とし、呼吸器感染症治療に対する理解と更には適切な感染症診療と抗菌薬適正使用の普及を願ってのものであり、個々の医師の治療法を制限したりその裁量権を侵害するものではない。本ガイドラインが広く浸透し、わが国の呼吸器感染症の診療や研究、あるいは教育に広く活用され、ひいては呼吸器感染症診療の質の向上につながり、耐性菌の増加を防止し、国民の健康に貢献できるものと期待している。本ガイドラインが一人でも多くの臨床医に活用され日々の呼吸器感染症診療のお役に立てれば幸いである。最後に本ガイドライン作成にあたって多大な労力と時間を費やし、ご尽力いただいた委員の先生方と事務局の方々に対して心から深く感謝する。

JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―(PDF 4.25 MB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 62, 2014年1号(1月) p.1~109

上記にさらに改定を加えた形で書籍を発行致しました。概要はこちらよりご覧ください。
呼吸器感染症治療ガイドライン(2014年7月発行)

最終更新日:2015年2月5日
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