日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

テイコプラニンにおける血中トラフ濃度20μg/mL以上の臨床的効果、安全性

論文名

テイコプラニンにおける血中トラフ濃度20 μg/mL以上の臨床的効果、安全性

委員会

抗菌薬TDMガイドライン作成委員会

髙倉 俊二(京都大学医学部附属病院感染制御部)
竹末 芳生(兵庫医科大学感染制御学)
大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際疾病センター/感染症内科)
笠原  敬(奈良県立医科大学感染症センター)
関  雅文(大阪大学医学部附属病院感染制御部)
高橋 佳子(兵庫医科大学病院薬剤部)
時松 一成(大分大学医学部総合内科学第二講座)
松元 一明(鹿児島大学医学部歯学部附属病院薬剤部)
三鴨 廣繁(愛知医科大学感染制御学)

要旨

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌をはじめとするグラム陽性球菌感染症の治療に用いられるグリコペプチド系抗菌薬であるテイコプラニン(TEIC)は、有効治療域の確認のためにTDMが必要であり、近年の臨床研究より目標トラフ値は20 μg/mL以上に設定するべきと考えられる。しかし、高いトラフ値で管理することの安全性は十分に確認されているとは言いがたい。日本化学療法学会抗菌薬TDMガイドライン作成委員会では、TEICのトラフ値20 μg/mL以上の安全性と臨床効果についての多施設調査を実施した。本委員会参加の10施設より、18歳以上、投与期間中に血液透析または持続的血液浄化療法を受けていない、TEICのトラフ値20 μg/mL以上を示した204例の臨床情報を収集・解析した。ほとんどの症例(176例、86.3%)は30 μg/mL未満であった。腎機能低下は全204例中17例、8.3%に認められたが、腎機能障害による治療中断は5例、2.5%のみであった。その他の有害事象もほとんど認められなかった。腎機能低下群はTEIC治療開始前の血清クレアチニン値がやや高い傾向があり、MRSA感染症の割合、および死亡率が有意に高かった。評価可能例における有効率は70.9%、菌消失率は87.9%であった。以上より、TEICによる治療において、TDMの目標トラフ値を20~30 μg/mLに設定することは臨床効果、安全性の面から妥当と考えられた。ただし本研究のlimitationとして、一度でも20 μg/mLを超えた症例を登録しており、血中トラフ濃度を20 μg/mL以上に維持した時の安全性は確認できていない。

テイコプラニンにおける血中トラフ濃度20 μg/mL以上の臨床的効果、安全性(PDF 273KB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 60, 2012年4号(7月) p.501~505

最終更新日:2014年3月20日
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