日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

日本化学療法学会未承認薬検討委員会:ゲンタマイシン硫酸塩注射液の使用状況に関するアンケ―ト調査結果

論文名

ゲンタマイシン硫酸塩注射液の使用状況に関するアンケ―ト調査結果

執筆者

大西 健児(東京都立墨東病院感染症科)
三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学)

要旨

 Gentamicin Sulfate注射液(注射用GMと略す)は、国内での承認用量が海外と大きく異なり、海外よりかなり少ないことから、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対して用法・用量の変更が要望され、国内でも高用量の開発が開始された。そこで、注射用GMの使用実態を把握すべく、日本感染症学会認定の感染症専門医ならびに日本化学療法学会認定の抗菌化学療法認定医・指導医を対象に注射用GMの使用状況に関するアンケート調査を実施した。
 有効回答は38.0%(719/1,891名)から得られ、2011年の1年間に注射用GMを使用した医師は約30%であった。成人での主な投与対象疾患は敗血症および感染性心内膜炎で、菌種は緑膿菌、ブドウ球菌属、腸球菌およびレンサ球菌属が多く、国内未承認の疾患や菌種に対しても一部で注射用GMが使用されていた。投与経路は主に点滴静注で、投与回数は国内未承認の1日1回が多かった。用法・用量については、国内承認用量の上限以下の固定用量(120 mg/day以下)で投与した医師もいたが、海外での一般的な承認用量である3~5 mg/kg/dayで投与した医師が最も多かった。TDMを実施した医師は実施しなかった医師より多く、1日2~3回投与時の目標血中濃度は、トラフ濃度はほとんどが2 μg/mL以下、ピーク濃度は4~10 μg/mLの範囲内が多かった。注射用GMは特に敗血症および感染性心内膜炎で他の注射用抗菌薬と併用されており、敗血症ではペニシリン系およびカルバペネム系、感染性心内膜炎ではペニシリン系との併用が多かった。特に注意した副作用は、腎機能障害と回答した医師が最も多かった。
 本調査により、国内既承認の用法・用量で注射用GMを使用している医師だけでなく、海外の承認用量と同様の高用量を使用している医師が多数いるという実態が明らかとなった。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に寄せられた要望を裏付ける使用実態が確認されたことから、わが国においても海外と同様の用量が早期に承認されることが望まれる。

ゲンタマイシン硫酸塩注射液の使用状況に関するアンケ―ト調査結果(PDF 1.35MB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 61, 2013年3号(5月) p.301~313

最終更新日:2014年3月20日
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