日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

高用量シプロフロキサシン検討部会『注射用シプロフロキサシンの高用量投与の必要性に関するアンケート調査結果報告』

論文名

注射用シプロフロキサシンの高用量投与の必要性に関するアンケート調査結果報告

委員会

日本化学療法学会未承認薬検討委員会
高用量シプロフロキサシン検討部会

委員長:
 三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科感染制御学)
委員:
 渡辺  彰(東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門)
 竹末 芳生(兵庫医科大学感染制御学)
 栁原 克紀(長崎大学病院検査部)

序文

 日本感染症学会・日本化学療法学会から「抗菌薬使用に関するガイドライン」1)が発表されたことにより、多くの場合、抗菌薬は適正に使用されているものと考えられる。しかし、重症・難治症例に対して、国内では承認されていない抗微生物薬や用法・用量が使用されていることも実際の医療現場では事実である。この背景には、各種抗菌薬に対する原因菌の感受性低下・耐性化や新しい抗菌薬開発が鈍化していることなどがあるものと考えられる。
 最近、国内において未承認の抗微生物薬の使用や用法・用量を見直す必要性があるのではないかとの機運が高まっている。日本化学療法学会では、海外では一般的に使用されているにもかかわらず、国内では承認されていない抗微生物薬の使用に関する必要性を検討し、必要であると考えられる薬剤については、早期の承認を各方面に促す努力を行うことを目的に、2008年に未承認薬検討委員会を新しく立ち上げた。また、必要に応じて、医師主導の臨床試験の実施も視野に入れている。
 注射用シプロフロキサシン(注射用CPFXと略す)は、2000年11月に国内では最初に承認された注射用フルオロキノロン系薬(FQs薬と略す)である。本薬剤は敗血症、外傷・熱傷および手術創等の二次感染や肺炎などの主に中等症又は重症の感染症に使用され、すでにその有効性については確認されている2~6)。しかるに、国内で承認されている1日最大用量は600mg(300mg b.i.d.)であるが、海外の承認1日最大用量1,200mg(400mg t.i.d.)よりも低いため、さらなる治療効果の向上や耐性菌出現抑制のため、用法・用量の見直しが必要であると考えられている。動物実験や臨床試験の成績を薬物動態学的(pharmacokinetics)および薬力学的(pharmacodynamics)に解析した結果、FQs薬の治療効果(有効性)ならびに耐性菌出現抑制は血中薬物濃度時間曲線下面積/最小発育阻止濃度(AUC/MIC)7~10)と最高血中薬物濃度(Cmax)/MIC11~13)に相関性が高いことが報告されている。そのため、注射用CPFXの高用量投与(投与回数の増加や1回投与量の増大)が可能となった場合、有効血中濃度の維持時間を長くすることができ、また血中最高濃度を高くすることができることから、重症・難治症例に対する治療効果向上や耐性菌出現抑制が期待できるものと考えられ、高用量投与の見直しを行うことの臨床的な意義は大きいと考えられる。
 そこで今回、日本化学療法学会未承認薬検討委員会(委員長:三鴨廣繁)では、注射用CPFXの高用量投与の必要性を検討するため、高用量CPFX検討部会を立ち上げた。必要性検討に先立ち、注射用CPFXの使用実態を把握することを目的に、処方疾患、高用量導入の必要性、高用量が使用可能となった場合の処方意向など、注射用CPFXに関する全国レベルでの実態調査をアンケート方式で実施したので、その集計結果を報告する。
 なお、本アンケート調査の集計結果は、第58回日本化学療法学会総会学術講演会(2010年6月2~4日、長崎市)において報告した。

注射用シプロフロキサシンの高用量投与の必要性に関するアンケート調査結果報告(PDF 324KB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 60, 2012年2号(3月) p.210~222

最終更新日:2014年3月20日
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