論文名
レジオネラの診断と治療に関するアンケート調査結果
委員会
公益社団法人 日本化学療法学会 レジオネラ治療薬評価委員会
委員長:宮下 修行(川崎医科大学附属川崎病院内科)
調整委員:青木 洋介(佐賀大学医学部附属病院感染制御部)
菊地 利明(新潟大学医歯学総合病院呼吸器・感染症内科)
関 雅文(東北薬科大学病院呼吸器内科)
舘田 一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
比嘉 太(国立病院機構沖縄病院呼吸器内科)
実務委員:牧 展子(大正富山医薬品株式会社安全性情報部)
内納 和浩(第一三共株式会社安全管理推進部)
小笠原和彦(元 第一三共株式会社)
顧問:渡辺 彰(東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門)
要旨
公益社団法人日本化学療法学会では、厚生労働省医薬食品局審査管理課より、レジオネラ属の適応を取得した抗菌薬を製造・販売する製薬企業が実施する製造販売後調査への協力依頼を受け、2006年よりレジオネラ治療薬評価事業を行っている。本委員会では、これまで各製薬企業が製造販売後調査で収集した症例を中心に調査を行ってきたが、今回、実地医療におけるレジオネラの診断方法や治療の実態について、より多くの情報を収集することを目的に日本化学療法学会員を対象にアンケート調査を実施した。
本アンケートは日本化学療法学会員3,867名に発送し、322名(回答率:8.3%)の医師から回答を得た。その結果、温泉や循環式浴槽等の入浴歴がある患者や肺炎の病態が急激に悪化した患者、β―ラクタム系薬の効果が不十分(または無効)の患者に対しては、7~8割の医師がレジオネラ検査を実施し、約2割の医師では、高齢者や肺炎の患者には全例でレジオネラ検査が実施されていた。また、レジオネラ検査の種類は、ほとんどの医師が尿中抗原検査を実施し、培養検査、血清抗体価検査、PCR検査は補足的に実施されていた。治療抗菌薬は、注射用キノロン系薬やマクロライド系薬が選択されており、レジオネラに効果が期待される抗菌薬が適切に選択されていると考えられた。さらに、レジオネラ検査の結果が陽性の場合だけでなく、陰性であった場合でも、レジオネラ肺炎が疑われる患者には、これらの抗菌薬で治療されていることが明らかになった。再燃予防には、キノロン系薬やマクロライド系薬の経口剤が処方され、治療効果判定には、臨床症状、胸部X線・CT検査、臨床検査結果を指標とし、補足的に尿中抗原検査等のレジオネラ検査の結果が用いられていた。
レジオネラの診断と治療に関するアンケート調査結果(PDF 1.41MB)
日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, 2016年1号(1月) p.66~75