前回「術後感染発症阻止抗菌薬の臨床評価に関するガイドライン」1997年版が発表され、約9年経過した。当時は未だ日本において予防抗菌薬の適正使用が十分には行なわれておらず、ガイドラインはその啓発も含めた内容になっていた。その後日本でもその考え方が広く一般病院にも普及し、抗菌薬使用に関する臨床研究も学会等で数多く発表されるようになった。そのような背景から、医師主導で行なわれる臨床研究のための新たなガイドライン作成の必要性が出てきた。この度の「術後感染予防抗菌薬臨床試験に関するガイドライン」は、抗菌薬自身の臨床評価にとどまらず、投与期間などの使用法に関する臨床研究を行なうにあたって遵守しなければならない条件や、実現可能な範囲での必要症例数などを明確化することにより、今後予防抗菌薬に関する臨床試験を計画する上で参考になるものとする目的で作成した。
平成19年7月
術後感染予防抗菌薬臨床試験に関するガイドライン委員会
委員長 竹末 芳生
術後感染予防抗菌薬臨床試験ガイドライン(2007)修正にいたった経緯
会員各位
昨年Vol. 55 NO. 4に掲載された術後感染予防抗菌薬臨床試験ガイドライン(2007)において、必要症例数の算出の部分で数カ所誤りのご指摘を受けました。この箇所は本ガイドラインで最も重要であり、臨床試験の設定症例数の根拠として引用されることも考え、このたび改めて修正版を掲載させていただくことにいたしました。
修正の要点は、まず評価の対象がSSIの発生というリスクに関するものであるにもかかわらず、非劣性の評価にSSI発生率の差の下限を利用していた部分を上限に変更しました。それに併せて関連する部分の表現を誤解を生じないような表現に変更しました。第2にSSI発生予測を6%としたときの必要症例数も誤りがあったため修正し、さらに必要症例数が1群100例近くになるよう8%で試算した結果も記載いたしました。
以上を修正し、術後感染予防抗菌薬臨床試験ガイドライン(2007)修正版として本誌に掲載させていただきました。学会員の皆様に混乱をまねき、この場をお借りしてお詫びいたします。
平成20年3月
術後感染予防抗菌薬臨床試験に関するガイドライン委員会
委員長 竹末 芳生
公益社団法人日本化学療法学会術後感染予防薬評価に関するガイドライン委員会
- 委員長
竹末 芳生 - 副委員長
三鴨 広繁 - 委員
荒川 創一、鈴木 賢二、坂本 春生、大久保 憲、清水 潤三 - アドバイザー
横山 隆
術後感染予防抗菌薬臨床試験ガイドライン(2007年)修正版(PDF 553KB)
日本化学療法学会雑誌 Vol. 56, 2008年2号(3月) p.210~217
【修正版の英訳】Guidelines for implementation of clinical studies on surgical antimicrobial prophylaxis (2007)(PDF 154KB)
Journal of Infection and Chemotherapy Vol. 14 (2), 2008 p.172-177