社団法人、日本化学療法学会抗菌薬感受性試験微量液体希釈法検討委員会は、臨床微生物検査室および微生物研究室が現在かかえている微量液体希釈法による薬剤感受性試験に関する問題点や疑問点について調査する目的で、日常検査、および研究室等で薬剤感受性試験にかかわっている本会会員および日本臨床微生物学会会員に広くアンケート調査を実施しました。
その結果、多くの会員が指摘した問題点は、Haemophilus Test Medium Broth(HTM培地)を用いたClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)法によるインフルエンザ桿菌の薬剤感受性測定時発育性の悪さ、それによる判定の困難さでした。インフルエンザ桿菌に対するMIC測定に関しては、日本化学療法学会法とCLSI法では基礎培地であるミュラーヒントンブロスへのサプリメントが異なります。アンケート調査では日本化学療法学会法培地のほうが、CLSI法培地よりも判定しやすいという回答が多数寄せられました。
このアンケート結果を受け、本委員会においてはインフルエンザ桿菌に対する測定培地の再評価を、全国複数の検査施設の協力のもと実施しました。
これらの再評価結果を持って、現行の日本化学療法学会微量液体希釈法に注釈を加える形で一部改定した報告案を、平成22年9月8日~同年10月15日の間に本学会ホームページに掲示し、パブリックコメントを募集しました。寄せられた幾つかの貴重な意見をもとに一部修正し、日本化学療法学会抗菌薬感受性試験微量液体希釈法検討委員会報告書としましたのでここにご報告申し上げます。長期間にわたりご協力いただきました会員の皆さまおよび、ご指導賜りました諸先生方に心より感謝申し上げます。
平成23年1月
社団法人 日本化学療法学会
抗菌薬感受性試験微量液体希釈法検討委員会
委員長 山口 惠三
インフルエンザ桿菌に対する微量液体希釈法培地の問題点
―日本化学療法学会法馬溶血液添加培地とCLSI法HTM培地の比較―(PDF 299KB)
日本化学療法学会雑誌 Vol. 59, 2011年2号(3月) p.206~213
Journal of Infection and Chemotherapy Vol.18 (1), 2012 p.134-143