日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

臨床試験委員会報告『従来の抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドラインQ&A』

 標記ガイドラインについて多くのご質問をいただきましたので、代表的なものをQ&Aとして公開することにいたしました。それぞれに委員会を開催した回答ではなく、主として委員長が代表して回答したものです。誤りがあれば、ご指摘いただければ幸いです。

問診について

  • Q1:ガイドライン3項目1)「患者の薬剤投与歴およびアレルギー歴に関する問診を十分に行う。」とあるが、問診に際して皮内反応中止の旨記載し、患者の同意を取ったほうがよいかをお伺いします(たとえばCTの造影剤使用の際の同意書のようなもの)。
  • A1:これは本質的にガイドライン作成者が答えるべきものではないと思いますが、参考程度に考えを述べてみます。
     患者の同意は、皮内反応を中止するということへの同意書とは思えませんので、皮内反応をしないで抗菌薬を点滴静注するということへの同意と思いますが、通常の診療において、抗菌薬を点滴静注される場合、当然患者さんへの説明はなされておられると思いますし、病状と治療の説明およびカルテへの記載は当然やっておられると思います。そのうえにさらに、同意書を取り交わす必要はないと思います。先生が必要と思われたらそのようにされたら万全でしょうが、種々の抗菌薬を点滴静注されるたびに同意書を取り交わすことは現実的ではないでしょう。
  • Q2:異なる時期にまったく同じ抗菌薬を使用する際、その都度問診を実施しなければならないのでしょうか?
  • A2:異なる時期の期間が問題ですが、この期間中に何らかの抗菌薬が使用されていれば、当然その状況(ショックなどのアレルギーの有無)をきく必要があるでしょう。間がそれほど空いてなく、前の抗菌薬使用の際に、アレルギー反応がみられてないことがわかっていれば、問診は不要でしょう。ただし、抗菌薬を使用すればするほど、宿主は感作されますので、アレルギー反応は出やすくなることを知っておいてください。すなわち、以前使用した抗菌薬が安全であったからといって、今回もショックは起きないという保証はないということです。したがって、厚生労働省からの「(2)投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。(3)投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。」を守って投与することになります。
  • Q3:「事前」にとは、投与開始日を指すのでしょうか? 極端な例で恐縮ですが、たとえば、入院時に本人ないしは家族から薬剤の投与歴およびアレルギー歴に関する問診を行うことで事足りるのでしょうか。
  • A3:「事前」とは「使用する前に」ということですので、常識的には直前ですが、数日前でもいいと思います。ただし、その間に抗菌薬が使われてないことが条件でしょう。入院時の家族からの問診は重要と思いますが、実際に具体的な抗菌薬を使用する時に、入院時に問診を取られた事項で十分であるかどうかの再確認は是非必要でしょう。
  • Q4:同意能力や認知能力が著しく低下している症例に十分な問診をすることは不可能なことが多いのですが、その際の対応法についてお教えください。その場合、家族から情報を得ることで事足りるのか、事足りるとしたら家族がいない症例や何らかの事情で家族と連絡がつかない場合の対処法についてお教えください。
  • A4:抗菌薬を使用すると医師が判断した場合は、速やかに施行する必要がありますので、このような場合は、アナフィラキシーショックに注意して使用することになります。最初はなるべくゆっくり点滴静注して、数分間は医師がそばについている必要があるでしょう。その後は、通常の点滴速度に戻して、医師あるいは看護師が注意して観察する。一時離れる時は、家族または付き添いの方に患者さんの状態を注意してみていただき、「気分が悪い」などの気配がみられたらただちに連絡していただくようにお願いしておくことなどの注意が必要でしょう。何時でもショック対策が取れる用意をしておくことが必要です。
  • Q5:2.抗菌薬静脈内投与の際の重要な基本的注意事項
    1)事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
    2)投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
    3)投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に投与開始直後は注意深く観察すること。
     上記における十分な問診を具体的に示す必要があると思います。またその判定についてですが、患者さんからアレルギー歴を聴取しても、たとえばチエナムでショックになったとはっきり言われる方はごく稀だと思います。多くは肺炎で入院した時に受けた点滴で気持ちが悪くなったことがある、あるいは抗生薬で蕁麻疹が出たことがある程度で薬品名などの詳細は不明であろうかと思います。薬剤アレルギーが疑わしい場合には、プリックテストから行うとありますが、どの程度疑わしい方に行うべきか明らかにする必要があると思います。
  • A5:ご指摘の通り、具体的な対処法を示していませんので、現場ではどの程度まで行えばいいのか判断に迷われると思います。抗菌薬によるアレルギー歴も患者さんは詳細に覚えていない場合もあるかと存じます。そのような場合には臨床医としての主治医の判断に任されるものと思いますので、不測の事態に対処できる用意をするように2)、3)の項目を挙げています。また、点滴開始から終了まで医師や医療従事者が付き添うことは難しいと思いますが、それを5分とか10分とか規定することも無理でしょう。アナフィラキシーショックは、点滴開始5分以内に起こる頻度が高いのは事実ですが、投与中にはそれ以降でも発生することもあります。したがって、ガイドラインとしては「投与中には十分な観察」としか、表現できません。アナフィラキシーショックは、迅速に処置すれば、大事には至らない病態ですので、早期発見と迅速な対応が取れるような内容で、それぞれの病院の状況に合わせたマニュアルなどの作成をしていただきたいと思います。
     従来の皮内反応がアナフィラキシーショックの予知になると信じて、ショック対策を十分していなかったことが問題であり、皮内反応が中止されたからショックが多発するとは思っていません。しかし、以前通り低頻度のショックは発生するという前提で、早期発見と迅速な対応に力点が置かれているガイドラインですので、今回の措置を十分ご理解のうえ、前向きな対応をよろしくお願いいたします。
     また、プリックテストが必要な場合はきわめて稀ではないかと理解しています。具体的に記載してありますので、ご理解ください。
  • Q6:「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版)」内の記載について。3.2)(1)のii)および3.2)(2)ii)に記載のある「類似抗菌薬」とは、「同じβ-ラクタム系薬でも系統が異なる抗菌薬」と解釈してよろしいでしょうか?
  • A6:その通りです。
     たとえば、ペニシリン系薬剤のどれかにショックあるいはアレルギーの既往があった場合は、ペニシリン系薬はすべて禁忌、「同じβ―ラクタム系薬でも系統が異なる抗菌薬」すなわち、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系などの抗菌薬をどうしても使用しなければならない場合に限り、プリックテストから皮内反応を行う。ショック以外の場合は、類似薬のプリックテストの必要はなく、慎重投与となります。プリックテストはあくまで、危険を承知でその薬剤を使用する場合に限られますので、一般臨床医への正しいご指導をお願いいたします。

投与時に関して

  • Q7:開始時の点滴速度等について何か指標のようなものがありますか。開始時には通常より遅い速度のほうがいいのか、どれくらい遅くすればいいのか、通常速度には投与後どのタイミングがよいでしょうか。
  • A7:特に、一定の基準はありません。常識的には、点滴開始時は大量の抗原(抗菌薬)が一度に注入されるのを避ける意味で、ゆっくり(どの程度かは明記できません)行うほうが望ましいと考えられています。ショックは投与後2~3分以内に発生する頻度が高いので、はじめの数分間は、ゆっくり点滴して何時でも中止できるような配慮が望ましいと思います。観察時間は15~20分程度で十分とも考えられますが、点滴中はやはり注意が必要なので、「投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。」の通知となっています。
  • Q8:外来や病棟で抗菌薬を投与した場合、具体的に何分くらい注意深く観察している必要があるのでしょうか。
  • A8:提言(日本化学療法学会皮内反応検討特別部会報告:日本化学療法学会雑誌51:497~506,2003)では「20~30分」と記載しましたが、今回の「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドラインとその概要版」では、「3)投与開始から投与終了時まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。」といたしました。これは、平成16年9月29日の厚生労働省通達「製薬企業に対して出された使用上の注意の改訂指示」の中の文章と一致させています。
     実際のアナフィラキシーの発生は注射後ただちにあるいは数分以内に起こることが多いことを知っておくことが重要であります。
     すべてのアナフィラキシーショックが注射後一定時間に起こるわけはなく、ご質問のような観察時間を決めることは不可能ですので、このような観察時間となったものです。問題は「十分な観察」の解釈かと思いますが、小生は現実的に医師がずっとそばについている必要はないものと思いますが、この解釈については委員会はコメントする立場にありません。

ショック時対応の薬剤に関して

  • Q9:当院は精神科主体の病院であり向精神薬を服用されている患者様が多いため、アナフィラキシーショックのfirst choiceのエピネフリンが禁忌となっています。この場合の処置のガイドライン等はありますか。
  • A9:各種薬剤間の相互作用についてはすでにご承知のこととご推察いたします。ご指摘の通り、ボスミン注は抗精神病薬が併用禁忌とされております。
     ブチロフェノン系薬はα遮断作用があり、エピネフリン(ボスミン)との併用禁忌です。ノルエピネフリン(商品名:ノルアドリナリン)はβ刺激作用がエピネフリンに比較して弱いとされ、抗精神病薬との併用禁忌は記載されておりません。併用時の安全性に関する十分な記載はありませんが、ノルエピネフリン注射液の効能効果に「アナフィラキシー性ショック」が挙げられておりますので、同ショックの際に、代替薬としてノルエピネフリンを注意深く投与することで対応していただく方法があると考えられます。エピネフリンの代替薬については各御施設にてご検討いただければ幸いです。
  • Q10:ブチロフェノン系や三環系抗うつ薬を服用している患者が抗生物質でアナフィラキシーショックを起こした場合の対応策について。
  • A10:精神科領域での薬剤については、正確なことは当方ではわかりませんが、以下のように考えます。
     ブチロフェノン系薬はα遮断作用があり、エピネフリン(ボスミン)との併用禁忌です。ノルエピネフリン(商品名:ノルアドリナリン)はβ刺激作用がエピネフリンに比較して弱いとされ、抗精神病薬との併用禁忌は記載されておりません。併用時の安全性に関する十分な記載はありませんが、ノルエピネフリン注射液の効能効果に「アナフィラキシー性ショック」が挙げられておりますので、同ショックの際に、代替薬としてノルエピネフリンを注意深く投与することで対応していただく方法があると考えられます。
     三環系抗うつ薬の場合には、逆にエピネフリンの作用増強する可能性がありますので、ごく少量から投与するなどして、反応をみながら追加投与をする、などのように、慎重投与することが望ましいと考えられます。実際の使用にあたっては、各薬剤の添付文書を参照ください。
  • Q11:概要版8.救急措置の具体策―中等度~重症の場合の「(1)エピネフリンの投与」の(小児)の項「効果不十分の場合、5~15分おきに追加投与する。」はガイドラインでは「2~3分」とあり、不整合となっていますが。
  • A11:添付書類には「なお必要があれば、5~15分ごとに繰り返す」となっておりますので、ご指摘のように「2~3分」と書いてあるガイドラインのほうを修正しなくてはいけません。実際には、血圧の上昇がみられない場合、状況に応じて追加投与するものですので、「2~3分」との記載が緊急に訂正しなければならないほどきわめて危険な記載である、とは思えません。したがって、次回の改訂では、ご指摘通り、訂正いたしたいと思います。
  • Q12:1.エピネフリン投与について。皮下注よりも筋注のほうが効果が高いというエビデンスがあります。2.昇圧薬投与について。アナフィラキシーで低血圧の場合、第1選択はエピネフリンの持続投与だと思います。ドーパミンはヒスタミン遊離を促進するので避けたほうがよいのでは。
  • A12:先生のご意見の通りです。ガイドラインの「中等症~重症の場合」の記載は、先生のご意見と同じ内容になっていると思っています。
     エピネフリンを第一に挙げており、皮下注、筋注、静注の順に記載していますが、効果発現速度はこの逆であると思っています。
  • Q13:概要版の「(3)酸素投与及び気道確保」の項、ガイドラインでは「c.気道の攣縮がある場合にはアミノフィリン……」と記載されており、不整合である。
  • A13:概要版の中で、「c.気道狭窄に対しては、アミノフィリン250mgを5%ブドウ糖20mLで希釈し、10~20分かけて静注。」が抜けているとのご指摘です。リーフレットができてみますと、この項を挿入するスペースがありそうですが、当初は字数が一杯で、どこか削除しなければならなかったものですから、この項を削除しました。B.の内容が気管切開や輪状甲状切開などかなり強力な処置を記載しましたので、その次のC.は、軽症の(1)あたりに書けばよかったと思っていましたものですから、削除してしまいましたが、次回改訂の際には記載するようにいたします。
  • Q14:ソルコーテフをショック症例に一律に使用するのは危険です。ソルコーテフに過敏の患者もあり、喘息が悪化することもある。添付文書にも掲載されている。
  • A14:ご指摘のように、ソルコーテフはコハク酸エステル型であり、サクシゾン、水溶性プレドニン、ソル・メドロールと同様、喘息の悪化を来すことがあり、特にアスピリン喘息には禁忌とされています。また、ソルコーテフは防腐薬としてのパラベンが添加されており、水溶性ハイドロコートン、デカドロン、リンデロンと同様、静脈内投与で過敏反応がみられることが指摘されています。したがって、緊急使用に際しては、リン酸エステル型でパラベンが添加されてなく、短時間作用型のものが最良と思われますが、残念ながらこの条件に合致するステロイド薬はありません。
     また、ソルコーテフはコハク酸エステル型であり、かつパラベン含有でありますので、救急での使用ではパラベンを含有しないサクシゾンあるいはパラベン含有であってもリン酸エステル型(水溶性ハイドロコートン、デカドロン、リンデロン、など)がより安全と考えられますが、それぞれの過敏反応の頻度は不明であります。
     このような背景で、例示薬剤として、ソルコーテフを上げましたのは、わが国で最も多く使用されていること(すなわち、多くの施設に用意されていること)、造影薬によるショック対策にもソルコーテフが記載されていることから、本薬を記載しました。
  • Q15:ガイドライン中、5-1.の必要な薬剤例に、1)エピネフィリン、3)マレイン散クロルフェニラミン、4)アミノフィリンはそれぞれ特定の薬品が指定されているのに対し、2)ヒドロコルチゾン、5)ドパミンは、ソルコーテフやイノバン、などの表現が使われています。この表現の使い分けには何か医学的な理由があるのでしょうか? 何か特別な理由がありましたら教えてください。
  • A15:ご指摘通り、一般名と商品名が混在していてご不審・ご不便をおかけし申し訳ありません。売上高などから多くの施設で採用され商品名が広く認識されているような場合には商品名がわかりやすいと思って、商品名を用いたり、その他の場合はなるべく一般名でというような大まかな考えのもとに記載しましたもので、医学的な特別な根拠があってのものではありません。誤解を招かないように、今後は一般名で統一するかどうか検討いたしたいと思います。

皮膚反応試験に関して

  • Q16:概要版2.2)(3)の記載が、ガイドライン3.2)にはない。
  • A16:ご質問は概要版の2.2)の「(3) (1)-ii」および(2)-i)における皮膚反応試験は、プリックテストから始める必要があり、当該注射薬を用いることとする。なお、事前にアレルギー専門医に相談することが望ましい。」がガイドライン3.2)の項には記載がないとのご指摘と思いますが、概要版はアナフィラキシーショックが発生した時の緊急措置に重点を置いたものであり、プリックテストに関しては詳細な記載はありません。したがって、この部分には簡単にプリックテストがあります、という意味で記載しています。一方、ガイドラインはプリックテストについては6.の項目で詳細に記載していますので、この部分には記載する必要がないと判断しました。
     「概要版」という言葉が、ガイドラインの縮小版と解釈されますので、このような疑義が生じたものと思います。はじめにガイドラインの作成を厚生労働省から依頼され作成しましたところ、医師会からこのガイドラインは詳しすぎて実際の臨床現場では読みにくいし緊急の場合は間にあわない、リーフレット用の簡単なものが欲しい、との要望が厚生労働省にあり、当方で「概要版」として臨床の場で緊急な場合にすぐ読めるようなものを作成しました。したがって、プリックテストについては、詳細を省略し、少しの記載にとどめました。
  • Q17:ガイドラインにそってプリックテストを施行する場合の当該注射液の0.16%溶液作成の方法と、0.16%溶液の根拠について。
  • A17:0.16%に関しては、過去におけるペニシリンGの希釈経験に由来していると思いますので、現実には、0.16%程度と理解するほうが合理的です。したがいまして、約500~600倍希釈液を用いれば宜しいかと理解されます。
     現実には1バイアルを5~6mLの溶液で溶解して、これを100倍すればいいと思います。具体的には、注射器を用いて(1mL+9mL)を2回行えばいいということになります。
     ご質問のように、0.16%に関しては厳密な基準ではありませんので、将来の改訂版では適切な濃度設定と今後作成しやすいような方法を示す必要があると思います。
  • Q18:従来の皮内反応用バイアルではなく、注射薬の一部を使うとのことですが、その場合は反応陽性の時に注射薬を廃棄しなければならず、費用が発生します。皮内反応用バイアルは従来通り供給されると聞いておりますが、それを使用することはできないのでしょうか。
  • A18:ご指摘の通り、費用が発生します。皮内反応用バイアルは注射薬とは組成が異なりますので、注射薬の一部を使用してほしいとの立場です。皮内反応用の溶液の製造・供給も今後必要ないとの立場です。
     プリックテストを行ってまで、その抗菌薬を使用する場面は、頻度的にはきわめて少なく、陽性であることの頻度はさらに低いので、大きな問題とはならないと思っていましたが、陽性であれば、破棄しなくてはいけませんので、ご指摘通りです。頻度が低いからといいましても、やはり問題がありますので、今後、十分な検討を行う必要があると思います。
  • Q19:皮膚反応試験プリックテストの0.16%溶液の調製においてその溶液として生食を使用してもいいのでしょうか?(生食キット製剤の場合では溶解液を選べないため)
  • A19:結構です。患者へ投与する溶液(溶質:抗菌薬+溶媒:生理食塩液)で検査してください。0.16%については、概略0.16%でありますので、500~600倍希釈と考えて結構です。
  • Q20:β-ラクタム系薬以外のキノロン系薬やテトラサイクリン、アミノグリコシドなどもプリックテストを実施すべきなのでしょうか、それとも従来の皮内反応液のある薬剤について実施するだけでよいのか、また、その際の溶液の濃度は0.16%濃度でよいのでしょうか。
  • A20:従来の皮内反応液のある薬剤について実施するだけでよく、テトラサイクリン、アミノグリコシドは不要です。しかし、これらでもアナフィラキシー、ショックが起こらないという保障はありませんので、問診とショック対策は必要だと思います。濃度については上述の通りです。
     プリックテストについて、多くの方が誤解されているようですので、念のために以下に述べます。このガイドラインの趣旨は、従来一律に行われていた有害無益な皮内反応の廃止です。プリックテストが従来の皮内反応に代わるものではないことを理解していただきたいと思います。プリックテストを行わなければならないような場合は、他の抗菌薬を使用してほしいと思います。危険を承知で、どうしても使用せざるをえないという事態を想定して、プリックテストを記載しております。プリックテストは「ショックを起こした抗菌薬に類似あるいは同じβ-ラクタム系薬剤でも系統の異なる抗菌薬を使用しなければならない事態」あるいは「当該薬剤に対して、これまでショック以外の過敏反応がみられた患者に対して、代替薬がなくその薬剤を使用せざるをえない場合」に限って行うものです。このような事態は通常の臨床の現場では、それほど多くないと思っています。気管支喘息患者や何らかの抗原に対してアレルギーがある患者に対して、「従来の皮内反応に代わる検査法としてのプリックテスト」ではありませんし、仮に行ってもショックの予知にはなりません。プリックテストがこのように利用される事態にならないように、ご理解いただくことを切にお願い申し上げます。
  • Q21:皮内反応試験:キノロン系は1~2μg/mL、それ以外は300μg/mL[0.03%]につきまして、その濃度設定の根拠、および、もし、その濃度設定において幅をもたせることが可能であるとしたらどの程度なのか、という点についてお教えください。
  • A21:皮反応試験の濃度設定は科学的根拠に乏しいことを論文にも記載しています。したがって、どの程度の幅をもたせるかという議論には回答はないことになります。パズフロキサシン以外のキノロン系をβ-ラクタム系薬と同様の濃度(300μg/mL)で皮内反応を行うと全例が陽性となるので、希釈していき最終的に1~2μg/mLが選ばれています。プリックテストとそれに引き続く皮内反応については、使用したい抗菌薬にアレルギー歴があり、相当の危険が予測される場合であっても、代替薬がなくその抗菌薬を使用しなければならない事態においてはじめて行われる試験と位置づけています。このような事態は臨床現場ではそれほど多くないと思っています。代替薬があれば、それで治療していただきたいと考えております。プリックテストは通常ではアレルギーの予知にはなりませんので、この試験がこれまで行われていた皮内反応に代わるものとして使用されることがないように、ご理解をお願いいたします。
  • Q22:プリックテストについて。アルコール綿で清拭するとアルコールにアレルギーがある人の皮膚が発赤して薬物によるアレルギーと判別が困難になるので、滅菌水で浸した綿で清拭しろと私はいわれたことがありますが、この点についてはいかがでしょうか?
  • A22:ご指摘の通り、アセトアルデヒド分解酵素がない人では強く発赤しますが、個人差が大きいと思います。なお、そのために判定が困難な場合には非アルコール性消毒薬を使用する必要があるでしょう。
  • Q23:皮内反応液をプリックテストに使用してよいのか、いけないのかを教えてください。
  • A23:これまでの考え方からいえば、当然使用できることになりますが、現在の皮内反応液は使用する抗菌薬とまったく同じものではありませんので、厳密にはプリックテストには用いられません。今後は、従来の皮内反応液はなくなることを想定しています。

その他

  • Q24:『皮内反応検討特別部会報告』日本化学療法学会雑誌 Vol. 51, 2003年8月号 p.497~506ですが、リファレンスの記載がありません。参考とされた文献はありますか。
  • A24:特別部会報告の引用文献は、本文中に記載されています。抗菌薬の皮内反応試験に関するデータおよびアナフィラキシー頻度などのデータはすべて、臨床治験および市販後調査資料に基づいております。
最終更新日:2014年3月20日
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