日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

CREに対する併用療法の検討―多剤耐性菌に対する治療戦略ワーキング委員会報告―CPEおよびnon-CPEに対するコリスチンおよびチゲサイクリンを用いない併用療法のin vitro併用効果

(2019年11月13日 掲載)

大神田 敬1)、松本 哲哉1、2)

1)東京医科大学微生物学分野
2)国際医療福祉大学医学部感染症学講座

要旨

 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)による感染症は難治性に陥りやすいにもかかわらず、現在、単独で有効な抗菌薬はコリスチン(CL)とチゲサイクリン(TGC)などに限定されている。そこで、今回、CLおよびTGC以外の抗菌薬を用いてin vitroにおける併用効果の検証を行った。
 各種カルバペネマーゼ(IMP-1、IMP-6、NDM、KPC、およびOXA-48-l)を産生する腸内細菌科細菌(CPE)65株、およびカルバペネマーゼ非産生ではあるがCREの基準を満たすnon-CPE 7株の合計72株を用いて、抗菌薬感受性試験、ブレイクポイント・チェッカーボード(BC)プレート法、およびkilling curve実験を実施した。
 抗菌薬感受性試験の結果、NDM、KPC、およびOXA-48-like産生菌はIMP-1/-産生菌およびnon-CPEに比べて、カルバペネム系抗菌薬およびアミノグリコシド系抗菌薬のMICは高値であったが、ミノサイクリン(MINO)、CL、およびTGCのMICは逆に低値であった。BCプレート法では、有効な薬剤の組合せはカルバペネマーゼの種類によりパターンが異なっていた。また、killing curveの検討の結果、有効な薬剤の組合せを用いることで、sub-MICでも殺菌または静菌作用を示すことが明らかとなった。これらの結果より、各カルバペネマーゼに対して最も有効性が期待される抗菌薬の組合せは、IMP-1(トブラマイシン+タゾバクタム/ピペラシリン)、IMP-6(ゲンタマイシン+メロペネム)、NDM(MINO+ビアペネム)、KPC(アルベカシン+ドリペネム)、およびOXA-48-like(MINO+イミペネム)であった。
 今回の結果は、CとTGC以外の抗菌薬であっても、併用によってCPE感染症を治療できる可能性を示唆しているが、カルバペネマーゼの種類によって効果が期待される抗菌薬の組合せは異なっており、さらに今後、in vivoや臨床における評価が重要な課題になるものと思われる。

CPEおよびnon-CPEに対するコリスチンおよびチゲサイクリンを用いない併用療法のin vitro併用効果(PDF 437KB)

日本化学療法学会雑誌 Vol. 67, 2019年6号(11月) p.605~619

最終更新日:2019年11月14日
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