日本化学療法学会

委員会報告・ガイドライン

CRE/CPEマウス大腿部感染モデルにおけるカルバペネム系抗菌薬およびアミノグリコシド系抗菌薬の併用療法の有効性評価

(2019年9月11日 掲載)

萩原真生1、2)、山岸由佳1、4)、加藤秀雄1、3)、坂梨大輔4)、塩田有史3、4)
浅井信博1、4)、末松寛之4)、小泉祐介1、4)、三鴨廣繁1、4)
1)愛知医科大学感染症科
2)愛知医科大学分子疫学・疾病制御学寄附講座
3)愛知医科大学病院薬剤部
4)愛知医科大学病院感染制御部

要旨

【背景】

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)はカルバペネム系抗菌薬に加え、既存の抗菌薬の中に有効性が期待できるものはほとんどない。そのため、CRE感染症に単独で有効な抗菌薬は限られており、現実的にはカルバペネム系抗菌薬を軸とした併用療法が推奨されている。実際、CREはカルバペネム系抗菌薬への薬剤感受性が低下しているが、その程度はさまざまである。そのため、CREにおける薬剤耐性の程度によっては、カルバペネム系抗菌薬の投与方法によってPK-PD理論的にも有効性が期待され、臨床データでもその有効性が証明されている。一方、in vitro試験の段階ではあるが、カルバペネム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬が有効という報告もある。そこで、CREマウス大腿部感染モデルを用いて、CREによる皮膚軟部組織感染症におけるカルバペネム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の併用療法の有効性について評価した。

【方法】

CREをカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)とnon-CPEに分けて評価を行った。特に、カルバペネム耐性の拡大が懸念されているEscherichia coli(EC)とKlebsiella pneumoniae(Kpn)を用いたマウス大腿部感染モデルを用いた(ECとKpnで1.CRE/CPE、2.non-CRE/CPE、3.CRE/non-CPE、4.non-CRE/non-CPEを各1株ごと)。なお、本研究では、メロペネム(MEPM)とアミカシン(AMK)を使用し、ヒトにおけるPK-PDパラメータが得られるように調整した投与量を用いた(MEPMでは%Time above MIC、AMKはCmax/MICを考慮)。マウス大腿部感染モデルに、生理食塩水(control)、MEPM単剤、AMK単剤、MEPM+AMK併用で薬剤を投与し、薬剤の投与開始から24時間後の大腿部の菌量と治療開始から10日(240時間)後の生存率を確認した。

【結果】

本研究で使用したECとKpnのMEPMとAMKに対する最小発育阻止濃度(MIC)は、0.016~>32μg/mL、2~64μg/mLであった。特に、本研究で使用したMEPMの投与量(200mg/kg/q8h)で得られた血中濃度は、ACU0-24 79.53μgh/mL、半減期0.29hを示し、予想されるPK-PDターゲット到達率は、56.7%と21.4%(MIC=1、4μg/mLの場合)であった。マウス大腿部感染モデルを用いた抗菌活性の評価では、すべての菌株(8株)に対して、AMK単剤よりもMEPM+AMK併用療法が有意に高い抗菌活性を示した。また、ECとKpnともにCRE株(CPEであるかにかかわらず)に対してはMEPM単剤と比較するとMEPM+AMK併用療法は有意に高い抗菌活性を示した。その一方で、non-CRE/CPE株に対しては、MEPM単剤とMEPM+AMK併用療法では抗菌活性に差は認められず、両レジメンは同等の抗菌活性を示した。さらに、CRE/CPE株(EC)感染マウスに対して、MEPM+AMK併用療法群は、MEPM単剤投与よりも4倍高い生存率を示した(50.00% vs. 12.50%、p=0.13)。

【考察】

本研究では、CREによる皮膚軟部組織感染症を想定し、マウス大腿部感染モデルを用いて、カルバペネム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の併用療法の有効性について評価した。その結果、MEPMとAMKの併用療法は、感染したECまたはKpnによるCRE感染症(CPEであるかにかかわらず)に対して有用な治療となることが示唆された。また、MEPMとAMKの併用療法はCREのMEPM高度耐性菌株(MIC>32μg/mL)においてもその抗菌活性を示したことからその有用性は高いと考察される。

最終更新日:2019年9月10日
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